【2009年11月最新版】直近決算発表に基づくmixi、モバゲー、GREEの業績比較〜業績差はさらに拡大〜 BRICS
【2009年11月最新版】直近決算発表に基づくmixi、モバゲー、GREEの業績比較〜業績差はさらに拡大〜
2009/11/12 12:10
前回の記事から早くも3か月が経過し、日本の三大SNSサイトを運営する各社の2009年7-9月期の四半期決算発表が出揃った。この3か月はGREEの独走を許したmixiとモバゲータウン(以下モバゲーと省略)が、起死回生を図るべく新たなビジョンを明示し、力強い一歩を踏み出しはじめた四半期といえるだろう。前回調査では、ゲームコンテンツの質に着目した短期的分析を行なったが、今回は特に3社の戦略にフォーカスし、中・長期的な視野も踏まえ、その業績と戦略を分析してみたい。なお、この分析レポートは、各社が投資家向けに公表している最新の決算報告、および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を情報ソースとしている。■2009年7-9月期業績とビジネスモデル比較まずは各運営会社から発表された2009年7-9月期の「企業としての業績」と「SNS事業単体の売上高」を比較してみたい。GREEの一人勝ちがさらに鮮明になっている。mixiと比較すると売上で約2倍、営業利益で約4倍の規模となった。特に営業利益は前四半期比で50%増、営業利益率にいたっては前四半期比7ポイントプラスの58%と驚異的な数字となっている。SNS事業単体で見た売上比較においても、GREEはモバゲーやmixiを遥かに上回り、その格差は拡大する一方だ。SNS有料課金売上を見ると、mixiが8%と低迷が続くのを尻目に、GREEは78%とさらに大きく伸ばしている。この有料課金はゲームアイテム売上、アバター売上、月額会員売上で構成されており、海外でも急成長している「バーチャルグッズ収益」だ。一方のSNS広告売上は通常広告(バナー、タイアップ、リスティングなど)と成果報酬広告で構成される。モバゲーは従来、利益率の高い成果報酬広告が強みであったが、4四半期連続で売上を落とし、今四半期は広告売上の43%に留まった。なおmixiはその多くが通常広告であり、GREEは広告構成比率を開示していない。この一年の売上推移を見るとGREEと他2社の成長力の違いがさらに鮮明となる。GREEは前年同期比423%の売上成長を遂げているのに対して、mixiは113%と横ばいに近く、モバゲーにいたっては87%と下降しており、前四半期に続き明暗がはっきりとあらわれている。モバゲーの場合、前述の通り、広告売上の落ち込みが激しい。下表では3サービスの会員数やページビューを比較した。前四半期では会員規模、PV規模はほぼ同レベルだった三者だが、今四半期ではGREEがページビュー(以下、PVと略)で大きくリードした。これは会員あたりのPV数に起因しているもので、(1)「一日平均あたりのPV数」で見ると、mixiの9.7PV、モバゲーの12.6PVと比較して、GREEは17PVとスティッキネスで大きく差をつけていることがわかる。この原因は前回記事で指摘したソーシャルゲームのクオリティにある。多数のユーザーが協力や対戦をしながら進めるソーシャルゲームにおいては、ユーザー数自体が差別化要因となるネットワーク外部性(利用者が増えるほど利用者の利便性が増す特性)が働くため、単純な後追い戦略では逆転が困難なのだ。この点に関しての詳細分析は前回の記事をご覧いただきたい。さらに(2)「1,000PVあたりの売上」でも、mixiの191円、モバゲーの230円に対して、GREEは289円と大きく上回った。これは有料課金売上の顕著な差(GREEはモバゲーの3倍以上、mixiの30倍)が原因だ。そしてこれもソーシャルゲームのクオリティ、それによるユーザーの熱中度に起因するもので、要するにゲームの得点をあげるためにユーザーがバーチャルグッズに投資しているのだ。結果として(1)と(2)の乗算となる(3)「会員1人あたりの月売上高」において、mixi57円、モバゲー89円、GREE151円と大差がつき、それが売上利益に直接はねかえる結果となった。■媒体特性の比較ここで、ユーザー属性の比較による媒体特性を見てみよう。媒体特性は前回調査と大きく変動はない。年齢では10代の多いモバゲー、20代の多いmixi、30代以上の多いGREEという傾向が明確だ。モバゲー売上低迷にこのユーザー購買力の低さは影響しているだろう。また男女比でみると、女性が多いのがmixi、男性が多いはモバゲーだ。この理由はシンプルで、SNSは成熟すると本来コミュニケーションを大切にする女性比率が高まる傾向があるからだ。例えば米国のFacebookやTwitterはいずれも女性比率が上回っている。この3サイトの中で最もSNS色の強いmixiに女性が多いのはある意味必然だ。一方ゲームサイトはその特性により性年齢比率が異なってくるので、女性向けゲームを集中投下すればこの均衡は変化する可能性がある。今回の調査で唯一変化があったのはGREEの携帯キャリア比率だ。au比率が徐々に低下し、当四半期でドコモと並んだ。これはテレビ広告を積極的に行なっている効果と言えよう。■3社を取り巻く経営環境SNSは強烈なネットワーク外部性を持つサービスだ。そのためシェア逆転には困難が伴う一方、実現するとその差が急加速する傾向がある。Friendsterを逆転したMySpaceしかり、そのMySpaceを逆転したFacebookしかりだ。前四半期に一気にSNSトップの座についたGREEは、その定石通り加速を強めて急成長している。そのためmixiとモバゲーは大胆なフォロワー戦略を選択し、現状の流れを打破する必要がある。また世界的な視座に立つと、モバイル市場においては急成長しているスマートフォンに着目する必要がある。日本における携帯契約数は現在1.1億台、これが大きく伸びることが考えにくく、その中でスマートフォンに市場を奪われる形で日本独自携帯は減少傾向に向かうだろう。そのため現在3社の主戦場である国内携帯Web市場は、一見急成長しているように見えるが、それほど遠くない将来に成熟化する可能性が高いのだ。一方、スマートフォンは2012年には全世界で契約数5.2億台(ガートナー調査より)に成長すると見込まれている。ここで注意したいのは、スマートフォン市場ではAppleやGoogleなどのリーディング企業がすでに課金や広告のインフラを押さえつつあり、「バーチャルグッズ」という切り札事業でもすでに多数のベンチャーが参入して激戦が始まっている点だ。そのため現在の3社のビジネスモデルをそのままスマートフォンで展開するのは困難だろう。さらにiPhoneではすでに10万以上、Androidでも1万以上のアプリが溢れており競争ハードルは極めて高い。このため3社が単純にこの市場に参入しても、携帯同様の収益を上げられるかどうか未知数な点が多いと言わざるを得ない。■3社の事業戦略と課題(1)mixi3社のうち最も素早く動いたのは売上・利益ともに国内SNS第3位の座に転落したmixiだ。OpenSocialに対応したmixiアプリは、8月24日にPC版が、10月27日に携帯版がスタートした。特にアプリは開始2か月で250万人近い会員を抱える「サンシャイン牧場」など、複数アプリが100万会員を超え順調なスタートを切った。その結果、先行して開始されたPCのページビューにおいて、9月は前月比11%アップの45.2億PVと大幅に伸びている。さらにネットレイティングス予測によると平均滞在時間が22%、ユニークユーザーも6%伸びたと発表された。あわせてすでにアプリ開発ベンチャー3社「コミュニティファクトリー社」「空飛ぶ株式会社」「Pikkle社」への出資を実行するなどオープンアプリ拡大に全力を注いでいる。課題はアプリ・デベロッパーが収益を上げられる環境を提供できるかだ。Facebookは課金広告まで外部事業者に開放し、高い収益性をデベロッパーに提供しているが、それと比較すると広告CPMや還元率で見劣りすることは否めない。携帯広告の還元率改善や成果報酬広告業者の参入などに素早く対応できるかがキーとなるだろう。(2)モバゲーモバゲーもmixiに続きオープンプラットフォーム化を発表した。すでに30社のパートナーに開発環境を開放し、1月からアプリデベロッパーのゲームが登場する予定だ。同時にオープン化のβテストも兼ねて内製ゲームが発表されたが、わずか4タイトルにもかかわらず10月単月で50億PVを稼ぐ結果となった。これにより長い間低迷していたページビューは10月に238億PVと前月比36%と急増しており、モバゲーにとって久しぶりの明るい話題となった。モバゲーのオープン化施策は精緻に設計されており、mixiと同様のバナー広告や課金インフラに加え、仮想通貨、成果報酬広告、アバター、さらには投稿監視まで広げて提供するというFacebookをも上回る高度なものだ。またデベロッパーへの還元率は一律70%とmixiの80%より高く見えるが、成果報酬広告や携帯広告などトータルで考えるとmixiよりデベロッパーにメリットがある可能性が高い。さらにDeNAは中国と米国の携帯電話市場を開拓すべく「WAPT社」「Icebreaker社」に出資した。またiPhone向けソーシャルゲームプラットフォームで実績のある「AuroraFeint社」にも出資を決めた。矢継ぎ早の国際展開は国内市場飽和の可能性を読んでのことだろう。オープン化と国際展開という重大な経営施策を同時に推進できるか、そのための経営資源は十分なのか不安要素もあるように思う。いずれにせよフォロワー企業として最大限に大胆な戦略を打ち出したモバゲーの動きに今後も注目していきたい。(3)GREE競合に大きな差をつけているGREEは、自社サービスのさらなる拡充を心がける一方、リスク対策や著作権問題などを通じて堅実な防衛に専念している。類似ゲームである「釣りゲータウン2」を開発したDeNAとORSOに対しては著作権侵害で訴訟を起こし、子供の無断利用による高額請求トラブル報道に対しては課金上限額設定やCM表現の見直しにすばやく着手するなど、リスク管理にも長けている様がうかがえる。一人勝ちの様相が続いているが、mixiとモバゲーのオープン化は当初想定を大きく上回るPVを稼ぎはじめており、国内SNS業界のゲームのルールは変わったように見える。今後、GREEユーザーが流出するような事態になれば、GREEもオープン化への対応を余儀なくされる可能性があるだろう。その場合はモバゲーと同様「内製+オープン」のいわば任天堂モデルになるだろう。また中長期的に見ると国内携帯コンテンツ市場は成熟化に向かうため、リーダー企業の必然的な打ち手としてiPhoneをはじめとするスマートフォンへの本格的な対応、それを機軸とする海外展開をうちだす可能性が高いと予想している。■まとめmixiはネックであったコンテンツの弱さを補うため、いち早くオープン化を宣言し、今年8月から実運用がはじまった。9月単月PVは10%以上増加し、10月からは本命の携帯アプリが開始される。これが直接的な収益に結びつき、業績が回復に向かうかどうかが注目ポイントだ。またやや遅れて開始されるモバゲーとの間で、アプリ優良デベロッパーの開発パワー争奪戦がおきるだろう。モバゲーはソーシャルゲーム化への対応遅れがユーザー流出を起こし、GREEの独断専行を許す結果となった。現状を打開するために、mixiに続きオープンプラットフォームを提供する方針を打ち出した。βテストの内製4ゲームは予想を大きく上回るペースでPVを稼ぎ、10月PVは30%以上増加した。モバゲーのオープン化モデルは精緻な設計となっており、構想通りに開始されるとmixiに集まったデベロッパーがモバゲーになびく可能性がある。また同時に国内外モバイル市場を見据え、大胆な海外進出を開始した。GREEの好業績は、自社開発した高品質ソーシャルゲームがキラーコンテンツになっているためだ。月あたりの会員収入でモバゲーの約2倍、mixiの約3倍。ページビューの伸びも他2社を圧倒しており、現時点で死角は見みたらない。ただしmixi、モバゲーともオープン化戦略でPVを増やしはじめており、今後GREEもオープン化対応を余儀なくされる可能性がある。また長期的な市場動向を睨み、スマートフォンや海外展開を仕掛けてくると予想する。今後、国内携帯市場はガラパゴスから脱皮しはじめる。主戦場が変化していく中で、日本を代表するSNS3社がどのような戦略を展開するのか、引き続きウォッチしていきたい。筆者Twitterはこちら。ご意見、コンタクトなどお気軽に。執筆:株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役斉藤徹監修:株式会社ワールド・カフェ代表取締役笠原造
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